安保法制に関するこれまでの論議の中で、エポックメイキングなことをあげる。
・与党が推薦した憲法学者が明確な違憲表明をしたこと。
これはオウンゴールだが、ここから潮目が変わった。
・内閣の支持率が30%台に降下したこと。
これは朝日の数字だが、読売も47%という数字を1面トップで報じた。
・沖縄戦終結70周年の慰霊式典で、安倍首相が「帰れ!」コールを浴びたこと。
安保法制には直接関係ないにせよ、現在の政権に対する怒りが噴出したという点で前代未聞だ。
第二次政権成立以来、数の力にまかせて大通りを信号無視し、弱者を跳ね飛ばしながら疾走する安倍一派が、ここに来ていささかスピードが弱まり、95日間の国会会期延長という「一時停止」に追い込まれた。
さらに、「侵略」や「お詫び」の言葉を盛り込むことを、今までかたくなに拒んできた70年談話を、閣議決定しない個人談話にする方針を検討しているらしい。おそらく早晩発表されるのだろう。
これでは談話を出す意味がなく、SNSでつぶやけばいい話だ。
大上段に振りかぶった太刀を降ろす場所を見失ったかのようでもある。
向うところ敵なしのように見えた勢いに翳りが見える。まさに最近の異常気象のごとく、5分先は豪雨か竜巻か雹か霰か。
圧倒的に権勢を誇っているかのようだった「強さ」は、実は「弱さ」の隠れ蓑であって、一度止まると死んでしまう魚のようではないか。
現在の日本の首相が(過去の首相と同じように)政治信念を確固として持ちつつ、日本の国益のために自らを大きく見せようとしている、時には虚勢を張るような深いメンタリティの持ち主だとは思えないし、単に調子に乗っていただけだと思うけれど、今回の70年談話に関する「弱気」は彼自身にとって内心どんな傷を負うものだったのだろう。
強く見える人間の弱気は、時として急激な自己崩壊にもつながりかねない。