6月4日の憲法審査会で参考人として招かれた憲法学者3名(とりわけその中で与党が推薦した学者さえも)が、安保法制案に関していずれも「違憲」との意見を述べたことが直接のきっかけとなって、官邸と与党内部は文字通りひっくり返っている。
以下、右往左往ぶり。
6月4日:官房長官が会見で「合憲と言う学者は他にもたくさんいる」と反論(その後9日の特別委で突っ込まれ「数ではない」と弁解)。
6月5日:副総裁は「学者はどうしても憲法の字面に拘泥する」と苦言。
6月6日:自民党国会議員に対し「反論の手引き」みたいな文書を配布。
6月7日:与党執行部など幹部が全国各地で街頭演説。谷垣幹事長の演説では「帰れ!」コール。
6月9日:自民党総務会で村上誠一郎代議士が「採決には党議拘束をはずすべき」と批判し紛糾。
そして、10日の日弁連主催の反対集会にはその村上氏が現れて、ただ一人で与党内で反旗を翻す思いと日本政治の危機感を切々と述べた。→全文
官邸と与党の反論はいずれも1959年の「砂川事件判決」を唯一の拠り所にしているが、これは、アメリカ軍の駐留を違憲(9条2項)とした一審判決を、当時の最高裁長官が「政治性を持つ事案については違憲・合憲の法的判断を下すことが出来ない」として覆したものであり、そもそもアメリカの意図が日本の司法に大きな影響を与えた判決であって、何十年を経た現在でも対米隷属の構図は変わっていない。
6月4日までは各論に終始していた特別委での論議は一気に憲法論議となって、社会の反対行動も勢いづいている。
既に反対声明をだしている主な団体は以下の通り。
・安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明:200名の憲法学者が連名。
・日本弁護士連合会(日弁連)
・日本労働組合総連合会(連合)
・全日本民主医療機関連合会(民医連)
・全国保険医団体連合会(保団連)
・全日本教職員組合(全教)
この他、自民党OBである小泉純一郎元首相、福田康夫元首相、野中広務元官房長官などが反対を表明し、6月12日には日本記者クラブにおいて、山崎拓氏、亀井静香氏、武村正義氏、藤井裕久氏、古賀誠氏が揃って会見を開く。
そんな中、読売新聞は8日の世論調査を1面トップでとりあげ、安保法制反対58%に上昇(賛成30%に低下)と報じた。安倍応援団長であるナベツネ一味がこういう動きを見せたことは、他のマスコミ報道のあり方に少なからぬ影響を与えかねない。
こうした内外の一連の動きは、政権を支えてきたフィクサーたちが見切りをつけはじめたかのようだ。